冬山で生き延びた牛
以前、「コトリ」と聞いたときは、なんのことかと思いました。
「子取り」つまり牛の子を育てて、市場に出すことまが、売木村では、かつては盛んだったようです。
でも、そういう牛の肥育農家が、今では3戸になってしまいました。
その肥育農家の人に、お話を聞く機会がありました。
「コンバインを使えば簡単だけど、稲わらをきざんで、田んぼに撒いてしまったんでは、冬の餌に困る。
それで、うちでは、はざかけをしとるようなもんだ」
売木村で、はざかけをする農家が多いのは、そういう流れもあるかもしれません。
でも、はざかけって、手間がかかって大変なんです。
まあ、美味しいはざかけ米が食べれて、牛さんもワラを食べれるなんて、うまくはできてます。
「トウモロコシの茎や葉も、もちろん餌になる。
同じものばかり、食べさせないように、いろいろやる」
村には、ブナの峰牧場というのがあります。
村の市街地が、標高800メートルくらい、ブナの峰牧場は、1200メートルくらいでしょうか。
夏でも涼しい売木村ですが、ブナの峰牧場ですごす牛も、いるようです。
「秋に、牛が牧場で行方不明になったことがあった。
さんざん探して、見つからなかったけど、春になって、生きて見つかった。」
そんなことがあるのでしょうか。
牛は暑さは苦手だけれど寒さには強い、とは言っても、マイナス20℃は、普通だろう真冬の山です。
第一、何を食べて生きていたのでしょう。
草が生えてないどころか、枯れ枝だって地面に凍りついて、持ち上げられない氷の世界と思います。
それも、たった一匹で。モオーこりごりだ、と牛が言ったかどうかは、聞き漏らしました。