「ミツが、かたまっとるんだけど」
夜のうちに雨があがって、気持ちよく晴れた朝の山道を、走っていた時のことでした。
ケータイには、普通ではかかってこない、近くのお家からでした。
言いにくい話ですが、集落のどこかで訃報、かと思ってしまいました。
なにしろ、人口589人の村なのに、今年になってすでに、二桁に達しているのです。
でも、そうでなくて良かった。
ミツとは、日本ミツバチのことです。
「えっ、日本ミツバチの分蜂ですか。うわー、残念。出かけてるんです。」
日本ミツバチの巣、いない歴1年弱。
去年の春に、空き巣箱に群れが入ったのに、しばらくしてどこかへ、行ってしまいました。
ケータイをくれた人は、分蜂を捕獲したりはしない人なのです
とっさに、日本ミツバチ仲間の顔が、浮かびました。
「家の巣箱に入ってなくても、蜂くらいは見かけるのに、この頃はその気配さえない」
その日本ミツバチ仲間とは、つい一昨日、そんな会話をしたばかりでした。
でも残念。
その人は、親戚ののっびきならない用事で、村にいないはずでした。
続いて、もう一人蜂仲間が、思い浮かびました。
いや、その人も、ほぼ同じ理由で、今日は村にいないんだった。
「そんなら、○○に連絡してみる」
そうか、○○さんがいたんだ。
よかったなあ、村でただ一人の、日本ミツバチが居る家、になるんだろうなあ。
でも待てよ、○○さん。
つい最近、近所の空き家二軒のそれぞれに、Iターンの若者が一人ずつ入った、と言ってた。
○○さん老夫婦と若者2人とかで、歓迎焼肉パーティーをやったらしい。
神様、偏りすぎではないでしょうか。
写真は、春先の空き家の、日本ミツバチ巣箱です。すみません。