ああ、人ちがい
ドアが開いたとき、外から、にこやかな笑顔で、こちらに手を振る女の人がいました。
ある大きな病院に、見舞いに行って、エレベーターで降りてくる途中のことです。
といっても、もちろん自分にではなくて、すぐ近くに立っていた、どこかの女の人に、手を振ったのです。
「ごめんなさい。人違いだった。知っている人によく似ていたから」
乗り込んでくるなり、手を振った女の人が、謝りました。
「インフルエンザが流行っています。マスクの着用を」
病院の中のいたるところに、注意を促す掲示がありました。
もちろん、エレベーターの中も、ほとんど全員がマスクをしていました。
写真は、ブルーベリー園花の谷への坂道、完全に冬枯れの、さびしい風景です。