ひと粒食べて動こうとしなかった男の子
「むこうにいっぱいあるって、行くよ。」
お母さんが声をかけても、男の子は、がんとして動こうとしませんでした。
ブルーベリー園花の谷、駐車場や受付所の脇には、数本の説明用の株が、植えてあります。
ブルーベリー狩りは初めてとか、木になっているのを見るのも初めてとか、そんなお客様はけっこう多いのです。
「なるべく青黒いのをつまんでください。ピンクが残っているのは、酸っぱいと思います。」
説明用の株のところへいっしょに行って、自分でつまんで食べてもらいます。
その2~3歳の男の子も、家族の様子を見ながら、おそるおそる手を出して、ひと粒口にしたのでした。
家族みんながにっこりして、いよいよブルーベリー畑に行くぞとなっても、その子だけは動こうとしませんでした。
ここにいて、これを食べる。これが気にいった。
たぶんそういうことだったのでしょう。
ちよっぴりおかしいけれど、とてもうれしい気持ちになりました。