その日、わたしキュートは、朝からブルーベリー園の受け付け所につながれました。つまり、オフシーズンには車庫兼物置兼作業場として使っている所です。
「上の道にも、そっくりなコーギーが来てるよ。」
11時頃、ブルーベリー狩りに来たらしい男の子が、そう言いながら、坂を降りて来ました。
もちろんわたしは、ただならぬ気配に、とうに気づいていました。すでに立ち上がって、身構えていました。
「わっ、色白だねえ。美人さんだ」
お父さんは、坂を降りて来たコーギーに、嬉しそうに言いました。
「キュート、そんなに吠えなくてもいいの。覚えてないの?」
そう、これがダイナお姉さんとの再会の始まりでした。約2年半ぶり、北陸の街の実家で、幼いときに別れて以来のことでした。
「歯をむきだしにしてる。お父さんのズボンに、キュートの泡が付いちゃったよ」
両方の親は、お互いに挨拶をしながら、ガウガウ騒ぎを鎮めようとしました。
「こりゃダメだ。キュート、いったんデッキに連れてって」
わたしはいつもの居場所、お家の前のデッキに、閉じ込められてしまいました。
「ダイナちゃんは、普通にワンワン言ってただけだよね。キュートがひどかった。泡まで吹いて・・・」
わたしのお父さんとお母さんは、色白のコーギーを、なでなでしている様子でした。
「キューちゃんのお家に、ダイナが侵入して来たから、仕方ないよね。よそで会ったら、違ってたよね」
ダイナちゃんのお母さんやお父さんが、わたしの所へ来て慰めてくれました。
「騒ぎで写真を撮るのも忘れてた。少し落ち着いたようだから、記念写真を撮ろうか」
しばらくして、両方の親とわたしたちは、一緒に写真を撮ることになりました。
ブルーベリー狩りに来ていた知り合いのお姉さんに、シャッターを押してもらいました。わたしたちは、それぞれのお父さんに、羽交い締めにされて、デジカメに収まりました。
でも、首から下だけの4人と2匹の写真はないそうですし、トリミングとかもやり方を知らないそうですから、ここには写真は出て来ません。
お母さんは、こうやって会うんだったら、早めに予約してキュートのトリミングに行って来るんだった、と言ってました。
「そうだ、川遊びに行きませんか。いい所なんです」
こんどは、お父さんは川遊びを提案しました。
「あっ、撮ってくれてありがとう。悪いけど、冷蔵庫からお茶を出して、飲んで行ってね。」
写真を撮ってくれた知り合いのお姉さんには言いました。ブルーベリー園主の職務は完全に放棄され、4人と2匹は川へ行きました。