お昼ごはんを食べると、お父さんはいつもお昼寝をします。お母さんはドラマを少し見てから、またお仕事です。
そんなときに、お家の東の坂道を、車が上がってくることがあります。ブルーベリー園「花の谷」のお客さんのときもありますし、そうでないときもあります。
そう、「花の谷」は、たまにしかお客さんが来ないブルーベリー園なのです。
「ワンワン、車が来たよ。お客さんかもしれないよ」
坂道を登りきったところで、上の道を車が西のほうへ行ってしまうのか、お家のほうへ入ってくるのかを、慎重に見極めます。
「ワンワン、お客さんだよ。今、車のドアを開けたよ」
すると、お父さんはあわてて短パンとTシャツを脱ぎ捨てて、長ズボンとポロシャツに着替えながら、出て行きます。はじめからその格好で昼寝していればいいのに、と僕はいつも思います。
「ポロシャツではよく眠られないんだよ」
お父さんはそういいます。いつか、胃カメラを飲んだときは、途中で眠ってしまって、お医者さんに起こされたことがあるそうですけどね・・・。
「ソラ、今日は子どもたちがたくさん来てくれたから、お相手してくれるかい」
ある日、歓迎してウッドデッキで尾を振っている僕を、お父さんが連れに来ました。じゃなかった、コーギー犬は尾がないので、ピヨンピヨン飛び跳ねている僕を、連れにきました。
もちろん、僕は大喜びで飛んでいって、男の子も女の子も、ひとりひとり順になめてあげました。怖そうにしている子もいましたが、すぐに慣れてうれしそうにしてくれました。
元気そうな男の子には、上にのしかかって、そこらじゅうなめまわしてあげました。大人たちが大笑いしていました。
「ソラはえらいねえ。ちゃんと順に、大人も子どもも、誰にもあいさつして回ったもんね。とっても優秀なホスト犬よね」
もちろんですとも、僕はどんな人でも大好きなんです。うん、ちょっと、くたびれたかな。
「でも、かわいい女の子のとこには、特別何回も行ってた気がする」
お母さんがさりげなくいいました。
ドキッ。そんな・・・。