朝夕の散歩のとき、デッキから外へ出してもらうと、僕はまっしぐらに花壇に向かいます。
家の前の花壇には、ワイルドストロベリーがあります。普通のいちごよりは、だいぶ小さいけれど、さっぱりとした甘さで僕は大好きです。
「おしっこは、どうしたの。すませてからにしなさい」
お母さんが叫びますが、もちろん僕は、いちごが先です。
それから今度は階段を駆け下りて、スモークツリーのブルーベリー園に向かいます。でも、ブルーベリーを食べるわけではありません。
先日、こっそりと試食してみましたが、緑色の実は、まだすっぱいばかりで、おいしくはありませんでした。みなさん、もうしばらくお待ちください。
僕の目的は、もちろんいちごです。チーイクのおもちゃでも勉強したし、僕はどこにいちごがあるかくらい、ちゃんと覚えています。
「スモークツリー」には、なぜかスモークツリーの木はないけれど、夏に東京のケーキ屋さんで使うのと同じ種類の、あまずっぱいとてもおいしいいちごがあるのです。
近くのハウスで専門に作っている人から、苗をもらったのだそうです。ブルベリー狩のときには、食べてみるといいですよ。
「目の前に赤いのがあるのに、気がつかないの」
僕があせって探しまわっていると、お母さんはそういいながら横取りします。お父さんもそうです。
なんだか、僕の親たちは横取りのプロみたいな気がしてきます。
そうそう、昨日、近所の奥さんが、きゅうりを持ってきてくれました。僕はお部屋の中にいたのですが、お母さんが気を利かせて、デッキへ出してくれました。
僕は一年ぶりのきゅうりを、近所の奥さんから、直接いただきました。とてもみずみずしい素敵なきゅうりでした。
いよいよ売木高原の夏が来たのですね。
我が家のハウスでも、今年になって、もう2本は、きゅうりが取れた気配があります。でも、僕はこれっぽちもいただいていません。できばえに自信がないのでしょうか。
近所の奥さんが帰っていくとき、僕は興奮のあまり、いつもよりずっと大きな声で吠えました。
「ありがとう」と「またお願いね」の気持ちを込めて、せいいっぱい吠えたのでした。
「すっかり、ソラのきゅうり好きが、有名になってしまったなあ。今年の夏は、たくさんきゅうりがもらえるぞ」
お父さんが言いました。
「どうせなら、メロンかなにか、もっと高級な果物が好きだったらよかったのに」
そんなこといわれてもねえ。僕、そんな高級な果物など、食べさせてもらったことがないんですよ。
写真について
行儀が悪くてすみません。実は、いつもこの格好で寝ています。
写真にだけは撮られないように、気をつけていたつもりでしたのに・・・。