鮭の皮ガム
「やっぱり、オヤツガムのせいだったんだ。
お医者さんの言う通りだった。」
おかげさまで、キューちゃんは、これまでのところ、健康そのものです。
9年前、この家の子になった時は、お父さんは大金を出して、保険をかけてくれたものでした。
よほど、ソラ兄ちゃんのことがあったのでしょう。
もちろん、2年目からは、きっぱりと保険をやめました。
「ねえ、キュート、歩き方がおかしくないかしら。
病院へ行かなきゃ」
ある日、お母さんが真剣な顔をして、言ったことがありました。
「そうかなあ、思わないよ」
いつも、なんでもないことでも、大騒ぎするお父さんが、どういうわけか冷淡でした。
この家では、お互い、発言は肯定されることのほうが、少ないのです。
でも、ふたりして、はるばると犬猫病院に、連れて行ってくれました。
「ああ、恥ずかしかった。
歩かせてみたら、普通に歩くんだよ。
看護師さんのところまで行って、甘えるんだもの」
車で待っていたお父さんに、お母さんが言ったものでした。
「確かに、歩き方がおかしかったのにねえ
もう、あそこの病院、行けない。」
病気での2回目の犬猫病院は、今回の左前足の甲、舐め舐め事件です。
あんまり舐めすぎて、茶色くなって、1円玉くらいのハゲになってしまいました。
「オヤツをやめてみなさい。
無添加のものなら、いいかもしれません」
お医者さんの言葉に従って、遠くまで探しに行って、鮭の皮ガムを買ってきました。
「鮭は自然のものだからいいのかな。
家畜の無添加ガムでも、キュートの場合は、ダメみたいだ。
すっかり治まってきたから、これだけにしょう。
喜んで食べているみたいだから、いいだろう」