歌手になるために、一生懸命練習しているんだよ
あるとき、生徒のひとりを、例によって例のごとく、厳しく叱ったことがありました。あんなに厳しくしなくてもよかったのに、と今でこそ後悔していますが、いつも真剣すぎるのが、なんとも悲しすぎる欠点でした。
もっとも、先生って、たぶんみんなそうです。
「《少しでも背中を見せたら、おしまいだ・・・》なんてこともないぞ」と気がつくのは、教師歴何十年ののちみたいです。
そして、やっとそう気がついた頃には、もはや生徒を惹きつける力は、ほとんど失われているでしょう。きっと。
「先生、○○ちゃんねえ、本当はとてもいい子なんだよ」
その翌日の休み時間、副級長さんが、職員室に来て言いました。
「だってあの子、歌手になるのが夢でねぇ、毎日毎日、ものすごく一生懸命練習しているんだよ。」
もちろん、そんな話は初耳でした。そういう教室に通っているのか、と思いました。歌手になるなんて、そんな簡単な話ではないのに・・・。
「歌手になったときのためにね、毎日毎日、一生懸命、サインの練習をしているの。いい子でしょう。」
かばう子も、かばわれる子も、素晴らしい生徒たちでした。それなのに、次の日もまた、誰かを怒鳴ったりして・・・。
小学6年生から歌手めざして遅いですかね〜??