苦手な散歩道
朝や夕方の散歩で門から外へ出た時が、重大な分かれ道です。
キューちゃんは右手、坂道を下って行くほうへ行きたいのです。
お隣のお家も見えるし、田んぼや畑と、ブルーベリー畑の間の明るい小道です。
なのにお父さんは左手、ゆるやかに坂道を登っていく道へと、引っ張ります。
「行くよキュート、こっち。どうしたの」
キューちゃんは足を踏ん張って、嫌がります。
尻尾だって下がって、誰が見たってキューちゃんの気持ちはわかるはずです。
それでも、お父さんは無理やりリードを引っ張ります。
そうしていて、突然リードを緩めます。
前には、ずっこけてしまったことさえ、あったのです。
「やっぱり嫌か。仕方がないなあ。
こっちだったら、焚き付けの小枝が拾えるのに…。
なんか居る気配がするんだろうか。
大きな動物だろうか。
何百メートルも、家もなにもない山道だもん、居るかもしれん
危険を知らせてくれてるのかもしれないなあ。やめとこう」
そして、年老いた人間一人と、尻尾を掲げたコーギー一匹は、明るい坂道を降りていくのです。