センベイグローブ。 でもそれは断固拒否
ランドセルを玄関に置くと,すぐにまた小学校に戻りました。毎日毎日,野球ばかりやっていました。
そのころ,子ども心にも,母の言いつけに,いつも頭を悩ましていました。
「お寺の鐘がなったら,すぐに帰って来なさい」
ところが,子どもたちの間にはルールがありました。
「打ったあとは,次の回を守ること。それからでないと帰ってはいけない。」
それでいつも頭を悩ませました。
お寺の鐘の鳴る直前に限って,打順がまわってくるのでした。
せっかくだから打ちたい。でも,打つと守ってからでないと帰れなくなる。
それでは,鐘が鳴ったら帰って来いという母のいいつけを守れなくなる。いつもその繰り返しでした。
いっそ,守り終わったときに鐘が鳴ってくれたら,あきらめがつくのに,そうはなりませんでした。
それはさておき,そのころは,野球といってもバットもグローブもありませんでした。柔らかいボールを手ごろな木の棒で打って,素手で受け取っていました。
むろん,ベースなどあるわけがなかったけれど,これは棒切れで地面に四角を書けばよく,気の利いた者はその上に草をちぎってきて置いたりしていました。
ある日,東京へ出て小さな運動具店を始めたばかりの叔父さんが,よほどかわいかったのでしょう,かわいいかわいい甥(むろん,わたくしのことです。)のために,なんと皮のグローブを送ってくれました。
そのグローブこそは,自分たち村の子どもたちにとって初めてのものでした。
もちろん,自分が守備のときは自分がはめました。
守備が終わって交代のときは,順に仲間に貸しました。軽く放り投げて,受け取ってもらいました。
攻撃が終われば,投げてもらって今度は自分が受け取るのでした。
今でも,グローブが空中を飛ぶさまをよく覚えています。
ところが,使い始めてしばらくしてわかたことなのですが、このグローブは不思議なグローブでした。
どうして,あんなグローブが作られたのか,また,どうして叔父さんはあんなグローブを送ってくれたものなのか。
今となっては,いやそのころでも聞くわけにはいきませんでした。
(「その2」へ続く)
そのころ,子ども心にも,母の言いつけに,いつも頭を悩ましていました。
「お寺の鐘がなったら,すぐに帰って来なさい」
ところが,子どもたちの間にはルールがありました。
「打ったあとは,次の回を守ること。それからでないと帰ってはいけない。」
それでいつも頭を悩ませました。
お寺の鐘の鳴る直前に限って,打順がまわってくるのでした。
せっかくだから打ちたい。でも,打つと守ってからでないと帰れなくなる。
それでは,鐘が鳴ったら帰って来いという母のいいつけを守れなくなる。いつもその繰り返しでした。
いっそ,守り終わったときに鐘が鳴ってくれたら,あきらめがつくのに,そうはなりませんでした。
それはさておき,そのころは,野球といってもバットもグローブもありませんでした。柔らかいボールを手ごろな木の棒で打って,素手で受け取っていました。
むろん,ベースなどあるわけがなかったけれど,これは棒切れで地面に四角を書けばよく,気の利いた者はその上に草をちぎってきて置いたりしていました。
ある日,東京へ出て小さな運動具店を始めたばかりの叔父さんが,よほどかわいかったのでしょう,かわいいかわいい甥(むろん,わたくしのことです。)のために,なんと皮のグローブを送ってくれました。
そのグローブこそは,自分たち村の子どもたちにとって初めてのものでした。
もちろん,自分が守備のときは自分がはめました。
守備が終わって交代のときは,順に仲間に貸しました。軽く放り投げて,受け取ってもらいました。
攻撃が終われば,投げてもらって今度は自分が受け取るのでした。
今でも,グローブが空中を飛ぶさまをよく覚えています。
ところが,使い始めてしばらくしてわかたことなのですが、このグローブは不思議なグローブでした。
どうして,あんなグローブが作られたのか,また,どうして叔父さんはあんなグローブを送ってくれたものなのか。
今となっては,いやそのころでも聞くわけにはいきませんでした。
(「その2」へ続く)