耳鼻科へ通った頃
あれはどういう意味を持つ治療だったのでしょう。
子供の頃のことです。小3の7月には、その耳鼻科病院のある街を引っ越したから、それ以前のことになります。
父の自転車に乗せられて行った先で、診察台に座らさせられて、鼻に管を差し込まれました。今もと思いますが、心ばかりでなく、鼻の奥までもねじ曲がっていたのでしょうか。
管を耳にも差し込まれたのだったか、一度に両方ともだったのかについては、さだかではありません。なにしろ、60年以上も昔、はるか幼少のみぎりのことなのです。
そして、足踏みポンプのようなもので、強く空気が吹き込まれました。
すると、突然耳が良く聞こえるようになりました。診察室の隣、待合室で話をしている人たちの声が、はっきり聞こえて来たのです。
ふだん、自分以外の人たちには、こんなにはっきりと会話が聞こえているのか、と子どもながらに愕然としたことを、今もはっきりおぼえています。
自分には聞こえてないのに、とほんとうにショックでした。
世界は自分には聞き取れない所で、動いていたのか・・・。子ども心に、そんなある種の疎外感のようなものを、覚えたのでした。
でも、その状態は長くは続かず、短時間でもとの状態に戻り、いつもの平和な子どもの生活に還ったと思います。
参考までに、大人になってから受けた聴力検査では、異常はありません。この歳でも、自分に都合の悪い事以外は、人よりは良く聞こえているようです。