桑の木
花の谷には、数本の桑の木があります。
あちこちに散らばっていて、芽生えてきたばかりのようなものもあります。
たぶん、大昔に、養蚕用に栽培していた名残りだろうと思います。
実際、近くには屋根裏でお蚕さまを飼っていた、という農家がいくつもあります。
芽生えてきたばかりのは、小鳥が実を食べてタネを落としたのでしょう。
桑の実を食べてみたいと思って、そのままにしておいたら、ずいぶん大きくなりました。
でも、食べてそれほど美味しくもなく、実用性もなかったので、去年邪魔な一本を株元から切りました。
ブルーベリーの日陰になるとも、思ったのです。
すると、1年でもうこんなに大きくなりました。
他の落葉樹が紅葉してきているのに、まだ青々としています。
これなら、蚕の食料として、とても都合が良かったんだろうと、痛感したことでした。
そして、突然思い出しました。
「朝、桑の木の枝を切ってきて、お蚕さまにあげてから、2里の道を中学へ通ったものだぞ」
大正元年生まれの父親が言っていた言葉です。