行方不明のポポー
「やっぱり、動物が拾って行ったのかなあ。」
昨日の夕方のことです。
キューちゃんとお母さんが、散歩から帰ってきた時でした。
お父さんが、玄関近くの植え込みで、下草をかき分けて、なにかを探していました。
「どうしても、見つからないものねえ。ここまで来る人なんて、まずいないから、動物かもしれないね」
そうなんです。訪れる人なんて滅多にない老夫婦のおうちなのです。
「しっかり熟してからと思って、置いておいたのが失敗だった。
植えて十何年で、やっと一個だけ生ったポポーだったのに」
そうなんです。
台風のあと、ふたりが入れ替わり立ち代り、いつも探しているんです。
「あれっ、キュート、どうした。今、草むらに鼻を突っ込んだよ」
お父さんが、キューちゃんの鼻先から、薄緑色の卵のような実を拾い上げました。
「ありがとう、キュート。こんなところにあったのか」
夕飯のあと、ふたりで試食している様子でした。
でも、キューちゃんには回ってきませんでした。
「来年はもっとたくさん生るといいな。
日当たりがイマイチだ。
天気が良くなったら、周りの木を切ってやろう」