両手の無い子グマ
「両手の無い子グマが、ワナにかかったんだわ。」
去年の秋に、ある人から聞きました。
どのような訳で、両手が無かったのでしょうか。
両手が無いのにワナにかかったなんて、どんなふうにかかっていたのでしょうか。
あまりにもびっくりして、問いただすこともないままに、なってしまいました。
最初にかかったのは、鉄の輪のワナだったかもしれません。
踏むとガチャンと鉄の輪が食い込む、あのワナです。
逃れようと必死に暴れたら、子グマなので腕がちぎれたのかもしれません。
でも、両手がないなんて…。
「かわいそうだから殺してやれ、とみんなが言った。」
ひどい話ですが、わからなくもありません。
「いや、ここまで生きてこられたんだから、このまま放してやりましょう。」
担当の人は、そう言ったそうです。
「そのあと、ワナにかかることも、見かけることもない。どうなったんだろうなあ。」