関戸高敬先生からもらえなかったシャムネコ
「おい、シャムネコをつがいで飼うことにしたからな。子どもが生まれたらやるぞ」
ある日、教頭先生が、そんなふうに話しかけてきました。
買ってきたのかもらってきたのか、どちらだったのか、たぶんこのごろでいう血統書つきの高貴なシャムネコ様だったのでしょう。
(こんどはネコですか。ほんとうにいろいろやりますね。また、高いネコなんでしょうけど、あのー、ネコを飼う気はないんです。こちらは、教育と生活とだけでせいいっぱいですから・・・)
なんてことは、恐れ多くて、とても教頭先生には言えませんでした。
いえ、もっときついことならいっぱい言ってました。すみませんでした。
とにかく、いろんな趣味を持った不思議な先生でした。
家に遊びに行ったときには、碁盤を見せてくれました。それがウン十万円もすると聞いて、世の中にはご隠居さんみたいな人が実際に存在するんだ、と初めて知りました。
2階の部屋は書棚がずらりと並んでいて、おまけに本を一冊手にしたら、その奥にも本が並んでいました。ものすごい蔵書でした。
蘭もやっていました。カトレアだかシンビだか、あるいはまたなんだか、ガラスの温室があって、夜中に世話をするみたいでした。
でも、ほんとうにたくさんのことをよく知っていましたし、やっていました。知ったかぶりで間違ったことを言ったりすると、やんわりときちんと訂正が来るのでした。
先生はずっと体が丈夫でなかったのですね。もっともっとやりたいことかあったことでしょう。去年が13回忌。64歳での早い他界でした。
そうそう、関戸高敬先生からシャムネコをもらうことはありませんでした。
「あのなあ、二匹ともオスだったわ」
何ヶ月かしてから、教頭先生がボソッと言いました。
心配なことだらけの数学教師を、いつも気にかけてくれて、ありがとうございました。
小牧での版画の遺作展のあらましを紹介させていただきます。いくつかのお城やお寺の版画は、確かに見覚えがありました。
場所 愛知トヨタ桜井営業所(小牧市民会館南へ1.2キロメートル)
0568−75−9331
会期 4/25〜5/30 10:00〜18:00
休み 4/30〜5/4 5/14 5/28